前回は「同一労働同一賃金」への対応の手順についてお伝えしました。今回はより具体的な対応について書いていこうと思います。
最初に対象となる短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者がいるかどうかを確認します。いれば対応が必要です。
まずは短時間労働者、有期雇用労働者のケースについて考えていこうと思います。
正社員に対して支給されている手当、利用できる福利厚生をすべて書き出してみてください。それぞれの手当や福利厚生について1.支給の目的、2.正社員と短時間労働者、有期雇用労働者との間に違いがあるかどうか、3.違いがある場合には違いを設けている理由、を書き出します。同様に、支給される賞与についての1~3を書き出します。
それぞれの目的を踏まえた上で、違いを設けている理由は不合理ではないといえるでしょうか。例えば、通勤手当を支給する目的は「通勤に要する交通費を補填すること」です。支給を正社員に限っている場合にその理由を「短時間労働者、有期雇用労働者は労働契約の期間に定めがあり職務内容が正社員と異なる為」とした場合、目的を鑑みて検討してみると不合理な理由になっていることが分かります。
(出典:厚生労働省「同一労働同一賃金取組手順書」)
基本給について確認する場合には、その決定要素に注目します。「職務の遂行能力」「業務内容や責任の重さ」「仕事の成果や業績」などの要素が正社員と短時間労働者、有期雇用労働者それぞれの基本給を決定する上でどの程度重要なのかを確認します。
(出典:厚生労働省「同一労働同一賃金取組手順書」)
それぞれの要素の重要度に差がある場合はなぜ差があるのか理由を書き出してみてください。その理由は不合理なものではありませんか。
ここまで見てきた待遇の違いが不合理ではないことを説明できるように整理しておきましょう。労働者から質問があったときに説明することが義務となります。
もし待遇の違いが不合理ではないとは言い切れない場合には改善に向けて検討が必要です。
派遣労働者を受け入れている(派遣先である)場合はどうでしょうか。
まず、派遣先から派遣元への比較対象労働者の待遇等に関する情報を提供する義務があります。労働者派遣契約を締結する前に、あらかじめ、派遣元に対し、比較対象労働者の待遇などに関する情報を提供しなければなりません。この情報を基に派遣元は「派遣先均等・均衡方式」により派遣労働者の公正な待遇を検討します。また、派遣先は派遣労働者の公正な待遇を確保できるよう、派遣料金について配慮義務がかかります。
(出典:厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について~派遣先の皆さまへ」)
比較対象労働者は、例えば「職務内容」と「職務内容及び配置の変更範囲」が同じ通常の労働者、のように、決められている選定基準に従って派遣先が選定する必要があります。提供すべき「待遇等に関する情報」は派遣元が選択した待遇決定方式別(「派遣先均等・均衡方式」もしくは「労使協定方式」)に違いますが、給与情報、福利施設の利用の可否などの情報です。
また、派遣先には教育訓練の実施・福利厚生施設の利用機会の付与・情報提供に関する義務もあります。派遣元の求めに応じて派遣労働者に対しても業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を実施するなどの義務、食堂・休憩室・更衣室の利用の機会を与える義務、派遣元の求めに応じて派遣先の労働者に関する情報を提供するなど必要な協力をするように配慮する義務です。
短時間労働者・有期雇用労働者を含む労使の話し合いが必要ですし、検討の結果、手当などの改善をするためには原資など考慮・検討しなければならないことがたくさんあります。早めに検討を始めることをお勧めします。
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