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執筆者の写真koyama

「同一労働同一賃金」が求められる社会的背景と 取り組みの3つの柱

更新日:2020年4月10日

まもなく、2020年4月「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」)が施行されます。これは働き方改革のテーマの1つ「同一労働同一賃金」に関連する法案です。あと2ヶ月、対応はお済でしょうか?


「同一労働同一賃金」の取り組みは3つの柱から成り立っています。


1.不合理な待遇差をなくすための規定の整備

2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

3.行政による事業主への助言・指導等や 裁判外紛争解決手続(行政ADR) の整備


中小企業への適用は2021年4月からなので1年ほど先延ばしに出来るのも事実。けれども就業規則や賃金規定を見直すには、短時間労働者・有期雇用労働者を含む労使の話し合いが必要ですし、検討の結果、手当等の改善をするためには原資など考慮・検討しなければならないこともあり、かなり時間を要すると思われます。


では、なぜ今「同一労働同一賃金」を政府は推し進めているのでしょうか。

厚生労働省のHPには以下のように記載されています。


「同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。」


これには3つの社会的背景があります。


1.少子化問題の視点

経済的基盤の弱さや雇用の安定性、仕事と生活の 調和の度合い、育児不安など、出産・子育てと働き方をめぐる問題が少子化の大きな要因になっています。下に示した統計を見ると非正規雇用の有配偶率・年収が低い層の有配偶率(男性)は低く、希望する子どもの数と実際の子どもの数の差は、特に男性の非正規雇用で多くなっています。つまり、経済的基盤の弱さ・雇用の不安定が、結婚や出産に当たっての「壁」となっていることがわかります。

2.貧困・格差問題の視点

日本の子供の相対的貧困率は先進国34か国中10番目と高くなっています(OECD 2014年調べ)。相対的貧困とは、その国の文化水準、生活水準と比較して困窮した状態を指します。具体的には、世帯の所得が、その国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態のことです。親の雇用形態別の子どもの相対的貧困率について、非正規雇用の方が高いという研究があります。特にひとり親家庭の貧困率は高く、これは日本のひとり親家庭の約85%が母子世帯であり、その約半数がパートやアルバイト等の非正規雇用であり低賃金で働いていることが原因と考えられます。


                  (出典:OECD 2014年資料)


3.労働生産性の視点

労働時間を削減しつつ、生産活動を維持・向上していくためには、時間当たりの労働生産性の向上や労働投入の増加が必要です。欧米諸国と比較すると、日本の労働生産性の水準は低くなっています。これは長時間労働が常態化していることが原因と考えられます。より短い労働時間で日常の業務を遂行する仕組みをつくることの一貫として多様な働き方を提供することが有効です。また、追加で就業を希望する者、勤務時間・休日などが希望と合わず失業している者などが、希望に応じて労働参加できるよう、ニーズに応じた多様な働き方を提供することが重要です。


これら3つの社会的背景から、多様な働き方を選択できるようにするために、今、「同一労働同一賃金」への対応が求められています。


参考:厚生労働省「第1回 同一労働同一賃金の 実現に向けた検討会資料」

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